rt-PA(アルテプラーゼ)治療

脳梗塞の超急性期治療、血栓溶解療法(rt-PA(アルテプラーゼ)療法)

脳梗塞を発症してから4.5時間以内であれば、rt-PA(アルテプラーゼ)療法の適応となる場合があります。

血栓溶解療法(rt-PA(アルテプラーゼ)療法)とは

 脳梗塞とは、脳に酸素や栄養素を運んでいる動脈が詰まって起こる病気です。脳の動脈が詰まると脳の細胞が傷ついて、細胞が死んでしまい元に戻らなくなってしまいます。脳の血流が低下した状態が長くなるほど、脳の細胞が死んでしまう範囲は広がります。しかし、脳の細胞は早急に血流を再開すれば元に戻る可能性があります。

 脳の細胞が死んでしまう前に、動脈の詰まりを溶かし、血流を再開することで脳の細胞が死なないようにする治療が、血栓溶解療法です。動脈が詰まって間もないうちに、血流を再開できれば、症状も軽くなります。ただし、治療効果が高い一方で、副作用にも注意が必要です。当院では、rt-PAを使用する前にご家族に十分な説明を行っています。

rt-PA(アルテプラーゼ)治療が対象となる方

 当院では脳神経内科が24時間365日、休まず診療し、脳梗塞や脳出血などを発症した救急患者さまを数多く治療してきました。rt-PA製剤は、日本では200510月から使用できるようになり、当院でももちろんこの治療を受けることができます。ただし、治療を受けることができる方、できない方がいます。

 まず、脳梗塞を発症してから4.5時間以内に投与を開始できることが必要です。脳梗塞が何時何分に起きたのか、最後に正常だったことを確認できた時間はいつなのかを確認します。その時間から4.5時間以上過ぎていた場合、残念ながら治療を受けることはできません。4.5時間以内だった場合でも、脳梗塞の状態を確認する検査をする時間が必要なため、発症から3.5時間以内までに当院を受診することが必要になります。もし脳卒中を疑う症状があれば、すぐに救急車を呼び、当院にご連絡ください。

 rt-PA製剤は、血栓を強力に溶かして症状を改善させる効果が高い反面、合併症として出血を引き起こすリスクがあり、適用の判断および投与には専門医の診療と十分な注意が必要です。当院は経験豊富な脳神経内科の専門医が、rt-PA製剤の適正治療指針に則って、患者さま、ご家族に治療の効果とリスクを十分に説明して同意をいただいたうえで、治療を行っています。

 rt-PA治療の適応にならなかった患者さま、あるいはtPA療法を行ったにもかかわらず脳卒中症状が改善しない場合には、脳血管内治療が適応できる場合があります。rt-PA治療と同様に、すべての患者さまに適応できるわけではありませんが、当院は脳血管内治療専門医が在籍していますので、適応となる患者さまの治療を行うことができます。

脳血管内治療(血栓回収療法)

 t-PA療法は一般的には再開通率が低いこと(約30-40%)や、現在の使用可能な時間が発症から4.5時間と比較的短いことが問題であり、その適応患者さんも限られています。そこでt-PA療法によって症状の改善が認められない場合やt-PA療法の適応外で、麻痺や言語障害などの脳卒中症状を発症してから8時間以内で、脳の主幹動脈(太い動脈)が詰まったことによる脳梗塞と診断された患者さんに対し、カテーテルを用いた脳血管内治療が行われるようになり、最近では血栓回収デバイスによる血栓回収療法が注目されるようになってきました。

 径が1mm以下から3mmの太さの、全長150cm前後のカテーテルを、主に足の付け根から血管の中に挿入して行います。詰まっている血栓を、カテーテルを用いて吸引したり、金網の筒のようになっている血栓除去デバイス(ステント)を用いて、回収除去したりすることで再び脳血流を開通させることを目的とします。

 また、ステントや吸引カテーテルは太すぎて入らないような先の方の細い血管については、細いカテーテルを誘導し、直接血栓溶解薬を注入する方法(局所線溶療法)を行うこともあります。

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